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課題が見出される底辺

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「蟲ババ様~宇虫人顔のババ様、落書き顔の死神と対峙する!のまき(3)」




少女は煙草を吸っている蟲ババの脇を通り過ぎると、先程ババ様が座っていた敷石に腰掛け、大きな溜息をついて空を見上げました。

小柄で、見た目は小学三年生くらいですが、おそらくは五年生か六年生、高学年なのかも知れません。しかし、彼女の特徴が正確な年齢を分かり難くしています。

家族にでもカットして貰ったのか素人然と短く切り揃えられた髪型に、大きな眼鏡、度の強いレンズを使っているのでしょう、瞳が眼鏡一杯に広がって見えます。その目は虚ろで、何処に視線を向けているのか良く分かりません。下唇が大きく張り出し、ずっと開かれたままの口は閉じられることもありません。まるで、何時も口を開けたまま、口で呼吸でもしているようです。

暫く、呆然と空を見上げていた少女は、大切そうに白い犬の人形を脇に置くと、二、三回その頭を愛おしそうに撫で、ビニール袋からおやつであろうプリンを取り出しました。しかし、なかなか食べ始めようとはせず、じっと手元を見詰めています。そんな少女に、先刻、蟲ババ妹に叩きのめされた悪霊蓑虫が静かに近付いていきます。

「ちっ」

舌打ちをして、少女に接近する悪霊を追い払おうと、蟲ババ様が行動を起こそうとした刹那、一旦、姿を消していた図形顔の死神が突然現れて彼女を止めました。

「なんやねん。なんで止めんねん」

異を唱える蟲ババ様を制した死神は静かに首を左右に振り、ふっと消えていなくなります。

悪霊は一定の距離まで近付くと、そのまま動きを止めて、じっと少女を見ています。少女に危害を加える気配はありません。それどころか、座っている少女の側に数多の魑魅魍魎たちが次々と近付いて彼女を取り囲みました。

少女はそんな周囲の状況を意に介することもなく、緩慢な動作でプリンを食べ始めました。一口食べては、物思いに耽ったように空を仰ぎ、またスプーンを口元に運びます。そして、何かに耐えていた少女の目から、溢れ出すように涙が流れ出しました。少女は、その涙を眼鏡の上から手の甲で拭うと、再びプリンを口にします。二口、三口。しかし、一度溢れ出した涙は、堰を切ったように留まることなく流れ出てきます。少女はプリンを脇に置くと、今度は両掌でそれを拭いました。勿論、今度の眼鏡の上からです。もう、その顔はぐちゃぐちゃになっています。

その時、姿を消していた図形顔の死神が再び現れました。今度は、少女の直ぐ脇です。

「どうしたの。また、学校で何か酷いことを言われたの」

少女の横に腰掛けた死神はゆっくりと彼女の方を抱き寄せました。

「偉かったね。ずっと、今まで我慢していたんだね。偉かったね」

死神は少女の頭を優しく撫でました。

「さぁ、折角のプリン、食べちゃおうよ」

その言葉に促されるように、少女は黙々とおやつを食べ始めます。

「ふ~ん。そう云うことかいな」

恐らく、死神の姿が最初からあれば、少女は最初から大泣きするか、それとも泣けないか、死神と少女の関係が定かではないものの、どちらかだったでしょう。多分、死神は泣くのを我慢すると踏んで、姿を見せなかったのだとすれば、二人の絆の深さが伺えます。

「お兄ちゃん・・・」

風に乗って微かに、少女が図形顔の死神をそう呼んでいるのが聞こえました。

「なんで、死神がお兄ちゃんやねん」

不思議に思っている蟲ババ様の元へ、プリンを食べ終わった少女が空き箱を持ってやって来ました。白いシャツに赤いスカート。履いている靴には何年も前にTVで放送された女の子向けの可愛らしいキャラクターのイラストがあります。シャツもスカートも使い古して色褪せていますが、綺麗に洗ってあり、丁寧にアイロンがかかっていました。

少女は、蟲ババ様の姿を見て一瞬怯みましたが、それは人間離れした宇虫人顔のババ様、大概の子供は目の当たりにすれば怖がります。

蟲ババ様が道を空けると、少女は灰皿の下に付いたゴミを捨てる穴を覗き込んでいます。何やら思案に耽っているようにも見えますが、厚いレンズ一杯に広がった視点の定まらない眼はどこを見ているか見当も付かず、下唇を突き出した口元は、半開きのままです。

「なぁ。お嬢ちゃん、これで涙、拭きぃな」

ハンカチを差し出した蟲ババ様を仰ぎ見た少女は、暫くモジモジとした後、自分のポケットをまさぐり始めました。何度も首を傾げ、訝しそうにポケットから小さな手入れては出して、それを繰り返しています。その単純で緩慢な動作にハンカチを出したままで固まっていたババ様が少し苛立ち始めた頃、少女はポケットから真っ白なハンカチを取り出しました。

「ありがと。でもママがいれてくれたんだ」

蟲ババ様に顔を向けてにっこりと笑います。そのまま、少女はまたしても眼鏡の上から涙を拭うと、余計に薄汚れたレンズ越しにゴミ箱を覗き込み「ちがうね」と、一言漏らします。

「そりゃ、眼鏡外して拭かなあかんやろ」

笑いながら応えた蟲ババ様に少女は「うん」とにこやかに返事をすると。

「あっちだ」

と、振り向いて南を指さしました。南東二車線の横断報道が青信号になるのを待って、角にあるコンビニの前まで走っていきます。

 どうやら、プラスティックの容器を捨てる場所を探していた様子です。コンビニの前に並んだゴミ箱で悩んでいる少女の姿を見た店員さんが店から出てきて、親しそうに声を掛けるとプリンの容器を受け取り、指定のゴミ箱に捨てています。少女は満足げな表情で何度も店員に頭を下げていました。

「おにいちゃん、ちょっとまっててね」

戻ってきた少女は図形顔の死神に声を掛け、今度はニコニコと笑いながら敷石に座り込みました。怖ず怖ずと、蟲ババ妹に叩きのめされた蓑虫悪霊が少女に忍び寄ります。

一歩、二歩。

さり気ない素振りで足を進めた蟲ババ様を、死神が再び制しました。

「なんやねん。気易ぅ死神に触られたくないで。縁起でもない」

ババ様を制した図形顔は、黙って少女に視線を向けます。

「どうしたの。どこがいたいの」

少女は蓑虫に声を掛けました。

「なんや、あの子にも連中が見えとる分けかいな」

「生まれながらにして、欠けた部分を持っているニンゲンは、他の人には持ち得ないモノを手にしているものです」

図形顔が沈んだ声で言いました。

「なんやねん。するとウチらも何か欠けたものがあるっちゅーわけかいな」

「人は誰しも何処かしらに欠損を持って生を受けているでしょう。それがその人の為人となっていく。貴女の場合は・・・先ず、そのニンゲン離れした容姿とか」

「容姿が欠けてるってなんやねん」

「鼻の高さとか、目の大きさとか」

「アンタ。死神の癖にお茶目なヤツちゃなー。ウチに喧嘩、売っとるんかい」

蟲ババ様が凄んでみせますが、図形顔は何処吹く風で言葉を続けています。

「妹さんも、心に欠けたものがあるでしょう。幼い頃から彼女を見てきた貴女にはちゃんと分かっている筈です。それが原因で、貴女方がいつか袂を分けなければ良いのですがね」

「なんや。知った風な口利きさらして。アンタ、只の死神やろが。ウチらのこと、なーにが分かるっちゅーねん」

「だから、私は個にして集、集にして総。現在も過去も、未来もなく。いつでも、何処にでも私の目はこの世界に存在する全ての魂を見詰めていますよ」

「なーにゆーとるか、サッパリ訳が分からんわい」

呆れたように蟲ババ様は首を振りながら、少女と蓑虫に目を向けた時です。悪霊である蓑虫男が彼女の前に跪き、蟲ババ妹によって痛めつけられた部位に手を翳していました。少女の掌からは微かに金色の光が零れ、それが悪霊の傷を癒やしていきます。

「おいおい。あれってもしかして」

蟲ババ様はこの光に見覚えがありました。嘗てはホイホイくんの守護神が、ババ様の身体に乗り移り、深い絆で結ばれながらも、天と地と別々の世界へ歩まなければならなくなった姉妹の魂を一匹の蛍に変えた黄金の光です。そして・・・

「勿論、貴女方の探し人が有する力に比べたら微々たるものですが」

図形顔は声を落として言いました。死神本来のトーンや口調が、この落書き顔から発せられると物凄い違和感があります。

「貴女がお察しの通り、此処は磁場です。ありとあらゆる念が流れ込み、積層する場所。それだけに妖や物の怪、悪霊や幽鬼が自然と引き寄せられる地です。ニンゲンたちはその忌まわしさを肌で感じ、無意識の内に避けてきましたが、この場に棲まう怨念、否、この地が贄を欲して人を集めようと画策します」

「この場所がかいな」

「この地は初めての貴女はご存じないでしょうが、実は目の前に広がる大きな駅、あれは嘗ては一キロも南にあったものが移転してきたものです」

「知らず知らずのうちに、この場所に誘導されたと」

「そして、今度はステーションビルを中心にした高層ビルの建設ラッシュ、ニンゲンたちは本能的に拒絶しても、この場所は今やなくてはならない存在になっています」 

死神は静かに周囲を見渡しました。

「此処、大きなステーションの真正面の割には意外と賑わっていないでしょう。この交差点周辺だけは、交通量は多いのに人影は疎ら、まるでエアポケットのように閑散としています。手前まで伸びている網の目のような地下街だけが原因だと思いますか」

「うんにゃ」

蟲ババ様が死神の言葉を否定しました。

「人は無意識の内にこれらの魔の誘惑と闘い、鬩ぎ合っているのです」

「逃げとるだけやないか」

「意識していないのですから、逃げている認識はないでしょう。そして・・・」

そこまで言って、死神は言葉を濁しました。

「あの子なんですがね」

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ヒキが巧い!

ああ、いつも良いところで切れてしまう。
空×Oさん、それにしても本当に面白いですよ。続きが気になってしまいますー!
( ̄o ̄)ノ" ナンデヤネン!
こんにちは、Baroncia様。

別に、ヒキなんて考えてもいませんでしたがw
と云うか、ババ様なんて読んでいる人、本当に極々限られた一部の訪問者ですから(爆)。

う~ん。
こんな便所の落書き、何処が面白いのか書いている方もサッパリなのですが・・・アリガトウゴザイマス。
取り敢えず、書き始めちゃったので、興味のない訪問者様方には悪いのですが・・最後まで書いちゃう予定ですw
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