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課題が見出される底辺

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「蟲ババ様~宇虫人顔のババ様、落書き顔の死神と対峙する!のまき(2)」




「覇眼が通用する分けあるかいな。此奴は悪霊やない死神や」

そう言って、低い鼻を押さえながら立ち上がった蟲ババ様に。

「漸く思い出してくれましたか」

図形顔は微笑みました。と、一瞬にして彼の姿が痩身黒衣の男性に変貌しています。

「今までは、この姿でお会いしましたな」

今度は声も口調も一変し、籠もった重厚な声で語り掛けてきます。

「貴女方一族は、特殊な能力に長けていらっしゃる。しかし、一族の方々で私の姿を正確に捉えることが出来たのは、いつ如何なる時も迎えに上がった当事者と貴女だけでした」

身長はピンヒールを履いて百八十センチを越えている蟲ババ妹より一〇センチほど高いでしょうか。澱んだ空気の中央で佇む痩身の男性は、そこに居るだけで禍々しい存在でもありました。

「こうして直接お話をするのは、初めて。ですがね」

深く頭を下げ、死神は一礼しました。

「しかし、最後に遭った母上様の時は何年前だったでしょうか。まだうら若い乙女でしたのに、今もあの頃と全く変わっておりませんね。その特徴のあるお顔立ちは」

「全然、褒められてる気がせぇへんのやけどな。その台詞」

「いえ、姐さんにうら若き乙女の頃があったなんて、それだけでも最大の讃辞では」

蟲ババ妹が、横から口を挟みました。姉の顔に正拳を叩き込んだことなど何処吹く風です。

「妹さんとは初めてお会いしますね」

死神が妹に向き直りました。

「嗚呼。この女、遊び歩いて両親の今際の際にも間に合わへん親不孝者やさかいな」

蟲ババ様の言葉に、死神は小さく微笑みました。

「アタシか姐さんを迎えに来たというならお門違いも甚だしいですが。特にアタシはまだまだお迎えが来る予定など心当たりもありませんし、その気もありません」

今度は、石像の如きアルカイックスマイルで蟲ババ妹が死神に微笑み返します。

「いえ、いえ。お二方をお迎えに上がるのはまだまだずっと先のことですよ」

死神は静かに首を横に振りました。

「しかし、遅かったですね。貴女方の探し人は既にこの地を去っています。彼がこの場所に現れたのは、もう一年も前のことでしょうか」

「なんや、あのアホ。やっぱり来とったんかいな。しかも、一年も前って。と云うか、なんでアンタ、ウチらが此処に来た理由を知っとんねん」

「ですから、私は個にして集。集にして総。この世界の至る所に私は存在しています」

「全然、訳が分からへんわぃ。せやけど。あのアホが、もう居てへんちゅーことは。今、此処で彼方の住人たちに救済の手を差し伸べとる巫山戯た野郎は一体何者や」

「ですから。もうすぐあの子が、この場所にやってきます。此処は、何時もあの子が座っている場所ですから、空けてくれませんか」

死神は、元の瘤を背負った図形顔に戻ると蟲ババ様にそう言いました。謙ってはいますが、何が何でも場所を空けろ!退け!と、云う脅迫めいた迫力が重圧となって二人に襲いかかります。

「ちっ、面倒やなぁ。誰だか知らへんけれど、邪魔なら自分で退けと言えばえーやないか」

交差点脇に設置された灰皿の脇まで足を進めた蟲ババ様が煙草に火を付けてぼやいています。

「無駄足だったようですね姐さん。こんな所でこの世ならぬ人たちを相手にしているなんて、絶対にホイホイさんくらいだと思ったんですがね」

蟲ババ妹も溜息混じりに言葉を受けました。

ホイホイくんとは、蟲ババ姉妹が物の怪や悪霊を退治する時に世話になっていた男性でした。世話になったと云うよりは、良いように利用していたと表現する方が正確でしょう。

二人からは幽霊ホイホイ、或いは物の怪吸引器と陰口を叩かれた、生まれながらにしてこの世ならざる、彼方の住人を引き寄せてしまう体質の持ち主です。勿論、彼自身には霊感の欠片もありません。神の座に在る強力な守護霊のプロテクトにより、どんな霊を引き寄せても、彼には全く累が及びません。しかし、彼の出現により、巧妙に姿を隠す悪霊や微弱な力しか持たない物の怪も、ついつい引き寄せられて、その正体を顕わにしてしまいます。

謂わば彼は、物の怪退治のお便利アイテムとも云える存在でした。蟲ババ姉妹は、存在を感じはすれど、なかなか正体を現さない物の怪と対峙する場合などに、ホイホイくんが好むと好まざるとに関わらず、適当に誤魔化しては彼をその場に引き摺りだし、物の怪の正体を焙り出したりしていました。

何時も、大勢の彼方に住まう人たちに囲まれながら、全く気付かずヘラヘラ笑っているホイホイくんを見ると、ババ様は背筋が寒くなる思いがします。或る意味、無敵の物の怪ハンター蟲ババ様にとっては、最も苦手タイプの天敵と云えるでしょう。それ以上に、訳も分からず蟲ババ姉妹の物の怪や悪霊退治に巻き込まれて超常現象に振り回されているホイホイくんは、この二人が原因で自分が酷い目にばかり遭うと勘違いして、姉妹を避けるようになっていましたが。

そのホイホイくんの守護霊がいつの間にか居なくなり、彼は突如として消息を絶ったのです。

「大丈夫やろ。あれはアホなだけに生命力だけは人間離れしたゴキブリ並や。大体、人か如何かも怪しいもんやで。あないにぎょーさんの霊や妖に囲まれてヘラヘラ笑ってられるんは普通じゃあらへん」

そんなことを言って、行方不明になっていたホイホイくんのことを話していた二人の前に彼が姿を現したのは、佐倉林檎嬢の依頼で、とある劇場に巣くう物の怪退治しようとした時のことです。レギオンと化した何十もの悪霊の集合体に襲われた時、忽然と現れた八つの首を持つ巨大な亀とそれに寄り添う数多の妖たちと行動を共にしていた、黄金の光を放つ謎の人影は明らかにホイホイくんでした。

「あいつ、根っからのアホやさかい。まーた、なんや厄介事に巻き込まれとるんとちゃうんか」

と、蟲ババ姉妹は彼を妖たちの世界から人間の世界に引き戻すべく、魑魅魍魎たちから情報を集めたり、悪霊たちをボッコボコに叩きのめして口を割らせたりして情報を集めていたのです。そして、蟲ババ姉妹は見えざる彼方の世界を激震させる異変が起こりつつあることを感じ取ったのでした。その中心に位置するのが巨大な八つ首の亀とホイホイくんだったのです。

「別に、妖たちの世界がどないなろうと構わへんけれど、あのアホだけは此方の世界に連れ戻さなあかんと思ったんやけど、もう居らへんのかいな。こうなったら、人の身でありながら妖や悪霊を癒やして救済しているとか云う物好きな奴の顔でも拝んでおくか」

吐き出す紫煙と共に、投げ遣りな蟲ババ様の言葉か零れます。

「人でありながら悪霊にまで手を貸すような輩、アタシは絶対に許しませんから。ああ云う奴らは二度と悪さが出来ないように絶対的に叩きのめしてやらないといけないんです」

蟲ババ妹も、先刻、自分がうちのめした蓑虫状の悪霊に視線を向けて言い放ちました。妹の場合、端から見れば自分のはけ口、ストレス解消のために悪霊を退治しているとしか思えません。

「来た。彼女がそうですよ」

いつの間にか、二人の間に割って入った図形顔の死神が此方に向かってくる幼い子供に目を向けて言いました。

その姿を見た途端。

「あっ、アタシ。ああ云う子、ちょっと苦手だから駅まで買い物に行ってきま~す。」

と、蟲ババ妹はステーションビルの方角へと小走りに駆けていきました。



交差点へとやって来たのは、小学生くらいの一人の少女でした。右手に白いビニール袋を持ち、左手で大切そうに白い子犬を抱え、俯いてとぼとぼと歩いてきました。
 

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