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蟲ババ様~ババ様は白衣の天使!?の巻(9)
 

(結)
 

その日、算術病院の階段脇では、最後まで残った夕子を花坊が慰めていました。

他の子供達は既に病室に戻っています。

「なぁ、もう此処にはウチしかおらへんから、思う存分泣いてええんやで、タコ」

花坊が夕子の肩に手を掛けて声を掛けています。今週になって新しい長期入院患者が二人入ってきました。どちらもそれまで最年少だった夕子よりも幼い子供たちです。

先程まで、夕子は泣きたい気持ちを我慢して、年下の新しい仲間達を宥めていました。

「偉かったなぁ、タコ。新しい子んたちの前では最後まで涙見せへんかったなぁ」

「うん、もうウチ大丈夫や。ウチ、お姉ちゃんになったから何時までも泣き虫でいられへんもんな。みんなに優しくして貰った分、あの子達の面倒見たらなあかんもんな」

堪えていた涙を止め処なく流しながらも、夕子は気丈にしっかりした声で花坊に応えます。

「ああ、タコももうお姉ちゃんやもんなぁ。タコのしっかりしたお姉ちゃんぶりを見たら、仁王様もきっと喜ぶで」

花坊は骨と皮ばかりになった手で優しく夕子の頭を撫でました。その仕草はまるで蟲ババ様そっくりです。

「なぁ、花ちゃん。花ちゃんは何で蟲ババ様のことを仁王様って言うんや」

顔を起こして夕子が尋ねました。

「うーん。ウチもよー知らへんけど、仁王様って『あー』と『うーん』があるらしいやろ。蟲ババ様の顔は魔除けに持ってこいやし、如何にも怒りの表情を顕わにした『あー』の仁王様そっくりやないか」

その一言に、ババ様の顔を思い出した夕子が噴き出しました。

そして、少し表情を曇らせます。

「蟲ババ様、どないしたんやろ。もう一週間も顔見いへん」

「なーに、蟲ババ様の事やから、またひょっこり顔出すに決まっとる。タコの事をあんなに思ってくれてはったんやさかい、タコが此処におる限り何処へも行ったりしーへん」

「せやな。ババ様うちらのヒーローやもんな」

いや、蟲ババ様はどちらかと云うと、地球制服を企む悪の秘密結社が作り出した敵役改造人間、しかも大幹部クラスだゾ、見るからに。

「さぁ、そろそろ病室に戻ろうや、タコ。ウチ、最近ベットから起きて動くだけで物凄く疲れるんや」

そう言って花坊が腰を上げようとした瞬間です。二人の目の前で『開かずの扉』がゆっくりと開き始めました。

「花ちゃん。扉が、開かずの扉が開いた」

夕子の言葉に花坊も息を飲みます。

開いた扉からは真っ白なシーツに覆われたベットが出てきました。二人の看護師がそれを運んでいきます。

階段に腰掛けた花坊と夕子の前を、ベットがゆっくりと横切っていきます。深閑とした廊下でキャスターの音だけがキュルキュルと二人の耳に届きました。

「『眠り姫』はん」

先に立ち上がったのは花坊でした。花坊は病棟の反対側にある大型エレベーターへと向かうベットを追いかけます。夕子もそれに続きました。

「『眠り姫』はん。よぅ頑張ったもんなぁ。」

「ほんま、今日まで、よー頑張ったもんなぁ」

口々にそう呟きながら後を追った二人でしたが、長い廊下の途中まで来ると、身体の弱っている花坊が立ち止まりました。

夕子は、苦しそうな花坊を支えて、静かに去っていくベッドを見送ります。

「友達になりたかったなぁ『眠り姫』はん」

「会って話がしたかったなぁ」

花坊の言葉を受けて、夕子も呟きます。

「そんなこと、あらへん。あんたらの声、何時も何時もちゃんと聞こえとったで」

その時、二人の耳に微かな声が聞こえてきました。

周囲を見渡しますが、側には誰も居ません。

「ウチら、もう友達やんか。ありがとな。ほんま、今までありがとな。これウチとお姉ちゃんのお気に入りや。何時も何時も、優しい言葉掛けてくれはった御礼や、貰おてくれるとウチ嬉しいな」

花坊と夕子は互いに顔を見合わせます。

「タコ。今の声、聞こえたか」

「今のって、『眠り姫』はんの声?」

怪訝そうに立ち尽くす二人の手には、何時の間にか何かが握り締められていました。

二人は同時にその小さな掌を開きます。

二人が握り締めていたのは、テレビで人気のアニメ番組のマスコットフィギュアでした。

「うわぁ。これ、ウチが大好きなアニメの人形や」

夕子が嬉しそうに声を上げます。

そんな夕子を、花坊が微笑みながら見詰めていました。

そして、花坊は掌の人形を見て呟きます。

「ありがとうな、『眠り姫』はん。さよなら」

二人は肩を寄せ合って、ベットが消えた方角を何時までも、何時までも見詰めていました。
                               


めでたし、めでたし。

ちゃんちゃん♪

お終い。
 


 

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まだ読み始めてもないから削除しちゃダメですよ(汗)
_□(. .。)ケシケシ
こんにちは、なおこ様。

読む予定あるのですか(爆)。
よ~く考えたら、誰も読まないだろうから削除する意味もないかとw

読んだ~!

おはようです♪
やっと読めました!今までまとまった時間が無かったもんですから・・。
今回はところどころで泣きそうになったりしました~。
このシリーズ、他にもたくさんあるんでしょうか?そのうちまた載せてくださいね。
( ̄◇ ̄;)エッ
こんにちは、おちゃ様。

ご、ご苦労様です(汗)。
泣きそうになりましたか……きっと、ホイホイくんが蟲ババ様に蹴り倒されたあたりの事でしょうか(マテ)。
お忙しい中、こんなものでお時間をとらせてしまって申し訳ないですw
ほとんどの人がスルーする中、わざわざ読んで下さるなんて、律儀ですね♪

なんや

拍手は1回しかできひんのか。うち、すっかりO-SAKA弁うつってもうてどないしてくれはるんや。顔まで蟲ババ様が乗り移りよったら明日から仕事行けへんでぇ(爆)
-(・・;)なんでやねん
こんにちは、なおこ様。

顔までババ様が乗り移ったら仕事行けなくなるって……

モデルになったお方にしっかり伝えておかねば(ボソリ)。

そうか!
O-SAKA人なのにGファンだから、タイガーステリトリー所払いの刑を喰らって関東地方に住んでいるのですね!!
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