恐怖体験 2008/01/21 (Mon)

吾輩は『ちょび』助である。

最近は自分の頁を『まこ』オバサンに占拠されつつあるので、自称・飼い主の頁に出張ってくる機会の多い『ちょび』助である。

さて、件の自称・飼い主・・・社会不適応者たる御多分に漏れず、全く自己管理がなっていない為、先週から風邪で苦しんでいる様子である。

自分が不摂生な生活をしているツケが回って来ているのであるから、幾ら体調が悪かろうと吾輩たちにまで迷惑を掛けない様、重々承知して、今まで同様に御飯やおやつや散歩に手を抜く事の無いよう、目を光らせていなければならない。

あ・・・。

それは奴が健康な時でも一緒か・・・根っからの自堕落な怠け者だから･･･あのヲトコ・・・。

さて、その自称・飼い主であるが、先週の途中。

奴が風邪をひいたと自覚する前日の出来事であるが、夜に大声で叫き散らし吾輩や『まこ』オバサンに対してとんでもない言い掛かりを付けてきた。

曰く。

「お前らは犬の癖に何も感じないのか！

なんて鈍い奴等だ！」

と、八つ当たり気味に叱りつけてくる。

吾輩、正直言って、とうとう気が触れたか？自称・飼い主？？

と云う印象だった。

それほどに、奴の取り乱し方は常軌を逸していたし、御世辞にも真っ当な大人の態度ではなかった。

事の発端は、仕事を終えた自称・飼い主が一階の仕事場から吾輩たちが居る二階に上がってきた時だ。

階段を上ると、二階の玄関先に出る構造になっている我が家、其処からカーテンで仕切られた台所には行ってくる訳であるが、この出入り口脇にはトイレがある為、洗面所の横を通り過ぎて吾輩たちの居る台所に入ってくる事になる。



↑台所と二階の玄関の間はこんな感じ。

だから、入る時に洗面所に備え付けられた鏡が目に入る事が往々にしてある。

と、云うか。

普通は目に付くのだが、気にする必要もないので普段は鏡に映ったものなど認識していない。と、云う事であろう。

だが、その日。

自称・飼い主は、二階に上がってきた時に何らかの違和感を感じて、鏡を何度も確認していた。

「人の顔･･･写ってなかったか？･･･今・・・」

誰に語りかけるでもなく、自称・飼い主が鏡を確認しながら呟いていた。

写っている訳もないだろうに。

酒も飲まない癖に、泥酔状態の酔っ払いの如き戯言を吐き続ける自称・飼い主。

素面なだけに尚一層始末が悪い。

きっと、鏡の前を通る時に自分の顔が写ったのであろう。

自称・飼い主は、毎日此処の鏡を覗いては、歯を磨いたり髭を剃ったりしているが、その時は自分なりに　『さぁ！これから自分の顔を鏡で映して見るゾ』　と云う、気合いと覚悟を持って見ているから平気だろうが、不意打ち的に奴の顔が鏡に映っていたら誰だって吃驚するだろう。

その証拠に、その時も見ていて滑稽なほどに奴はビビっていた。

そして、何の用だか知らないが、恐らくはＰＣで遊ぶつもりだったのだろう。

再び一階の仕事場に降りていこうとした刹那！

「ぷぎゃぎゃぎゃぎゃ」

蟇蛙をコンクリに叩き付けた時の断末魔のような叫び声が自称・飼い主の口から漏れた。



カーテンの前、本棚（ゲーム機やＣＤ・ビデオしか並んでいない棚なのに本棚と呼ぶのはこれ如何に？）に掛けられたセーターの影に隠れるようにして、男性が膝を抱えて蹲っている･･･と、言い出すのである。

居ネェよ･･･そんな奴（爆）。

良く見ろよ･･･自称・飼い主。

奴の狼狽ぶりに此方の方が吃驚してしまった（大笑）。

自称・飼い主の半狂乱ぶりに唖然・呆然とする吾輩と『まこ』オバサン。

それでも、自称・飼い主の奴は騒ぎ続けている。

そして、奴は落ち着いて、カーテンの側に目を向けた。

奴の目には怪しげな人影など全く映っていない。

それは、離れた位置にいる吾輩たちにも分かるほどはっきりとした事実である。

「おい、お前の勘違いだ。落ち着けよ自称・飼い主」

ワン！

と、吾輩が声を掛けてやったが、自称・飼い主の動転ぶりは治まらない。

「今は見えていなくても、まだ其処にいるんだ！」

とか訳の分からない事を口走っている。

「気配で分かる。見えなくても、其処にいるのが見えるんだ」

お前･･･それは日本語として完璧に矛盾してないか？？？

もしかして･･･学校の国語の成績･･･驚くほど悪かっただろう･･･自称・飼い主・・・。


↑奴に言わせると、目に見えなくても此処いら辺に男性が膝を抱えて蹲っている姿が見えるらしい。

勿論、数日後に撮った写真なので怪しげな気配はまるでない。

あの時も、吾輩は何も忌まわしげな気配など感じなかったが・・・。

あのなぁ・・・。

『ほおむず』と『ぽいろつと』すら足元にも及ばない名探偵の吾輩ならば･･･目に見えないものを感じ取って画像を脳裏に映し出す事が出来るゾ（エバリ）。

吾輩の嗅覚の前ではニンゲン共の微妙な心の変化や感情の高ぶりでさえ、即座に関知して嘘も隠し事も、はたまた姿をくらましていても白日の下にさらけ出す事が出来る。

だが・・・お前では無理だろう、お前では･･･自称・飼い主・・・。

お前とは結構長い付き合いになるが、お前にそんな能力の片鱗も、鼻糞か耳クソの欠片ほども才能も吾輩は感じた事がない。

お前に見えないものを感じ取るなど、絶対に無理（断言）。

お前は目に見えるものや手で触れる事でしか、存在というものを感じ取る事が出来ない奴なんだから。

気のせい・気のせい。

などと、吾輩と『まこ』オバサンが涼しい顔をしていたら・・・。

「お前らは！犬の癖に何も感じないのか！」

と、吾輩たちに言い掛かりとも八つ当たりとも取れる罵声を浴びせてくる。

とことん救いようのないヲトコである･･･このヲトコ・・・。

何より『吾輩は「吾輩」と云う存在であって犬ではない』と、何度も繰り返し主張しているのに、自称・飼い主の奴は全く効く耳を持っていない様子だ。

挙げ句の果てには・・・。

「お前ら！　此処に居る奴を何とかしろ！」

と、吾輩たちに居もしない不法侵入者を退治しろと命令してくる。

確かに、吾輩はこの家の『長』として、勝手に我が家に入ってくるような不届き者を退治してやる職務を負ってはいるが･･･居ないものは追い出しようがないだろうに（爆）。

それより、何だ？？？

普段から自称・飼い主の奴はエバってばかり居る癖に、こう云う時には身も蓋もないほどに取り乱して吾輩たちを当てにばかりしている。

日頃から尊大な癖に肝心な時には周囲ばかり当てにする依存心の塊のような最低ヲトコだな･･･自称・飼い主の本性は・・・。

吾輩たちが何の力にもならないと悟ると、奴は「えい！」とか「気合いだ！」とか「退け！」と何もない所に向かって怒鳴りつけている。

「うおりゃぁぁ！」

とか云いながら、全身に気をみなぎらせて一階に降りていき、上がってくる時も「えいやぁ！」とか滑稽な大声を張り上げて昇ってきた。

馬鹿だ。

馬鹿である。

馬鹿過ぎるゾ・・・自称・飼い主。

吾輩の住んでいる集合住宅は昭和40年過ぎに作られた老朽化激しいオンボロビルである。

当然の如く、防熱や防音設備などは一切施されていない。

お前の情け無い大声･･･絶対に、近所の人たちに聞かれているゾ･･･みっともない。

吾輩が恥ずかしくて近所の人に合わせる顔がない。

暫くして落ち着いた自称・飼い主曰く。

「アレは結構小さかったから･･･子供だったのかな？子供だったら大声で脅したりして可哀想な事をしたな・・・」

あのなぁ・・・自称・飼い主・・・。

お前より数万倍も数千万倍も物事に敏感な吾輩が何も感じなかったんだから、誰も居なかったって・・・。

それに居たとしたら、子供の方が危ない事が多いんだゾ。

子供の場合は自分の辛さや苦しさを少しでも分かって貰おうとダイレクトに感じてくれる人にぶつけたりするだろう。

このヲトコ･･･子供や女性に甘すぎる・・・。

特に女性なんか、何度も酷い目にあっても全く学習能力がないので、同じ鉄を何度も踏んでしまう。

それならそれで、吾輩をもっと甘やかしてくれれば良いのに･･･と、思うのだが･･･吾輩の気持ちなど、この鈍いヲトコには全く通じる気配がない（爆）。

嗚呼。

そう云えば、その後奴は体調を崩したな。

もしかしたら、本当にあのヲトコ、あの時に誰かに取り憑かれていたりして（爆・爆）。

嘘だけど。

大体、急に取り乱して大声で慌てふためく自称・飼い主の姿を目の当たりにしていた吾輩たちの方が、奴より余程怖い思いをしたぞ。

昔、氏神様にお参りに行った母親が、境内で二人の男性を目撃しそれを絵に描いた事があった。

勿論、それはリアルなヒトではなかった訳であるが。

暫く後、我が家にお払いに来たエライ見えないものでも見えちゃうゾ先生が、母親を激しく叱った。

「こう云うものは見ても決して絵に描いてはいけません」と。

何でも一人は其処の氏神様、そしてもう一人は自称・飼い主の奴を守っている守護霊らしかった。

奴を守ってくれる守護霊は地位は低いが神様の座にあるらしい、尊いお方だそうな。

地位が低い辺りは・・・如何にも奴らしい･･･とは云えるが（爆）。

あ・・・バチが当たるかな吾輩･･･こんな事言うと。

だから、自称・飼い主は「強力なお方の元に庇護されているから、何事も一生懸命に頑張れば必ず報われる恵まれた星の下に生まれたのだから感謝して精進しなさい」と、お説教を受けていた（爆）。

「この方は不動の守護霊ではないので、失望させて離れてしまう事がないように日々真面目に暮らす事が肝要」

とも言われていたらしいが・・・。

そんな事で生まれながらの社会不適応者＝ハゲオロカ＝自称・飼い主の生き方が変わる筈もなく・・・。

おお！

幽霊ホイホイとまで噂された自称・飼い主が今まで一度も怖い思いをしなかったのは、このお方の存在があったればこそ！！

それが急にこんな騒ぎを起こすなんて・・・。

もしかして、あまりに自堕落な生活ばかり送っているものだから、遂に守護霊が呆れ果てて去ってしまった？

となると・・・それまでワラワラワラと自称・飼い主に寄り添っていた此の世ならぬ方々が抑止力を失って一気に（爆・爆・爆）。

･･･それだと、これから頻繁に先日のような大騒ぎを起こす事になるのか・・・自称・飼い主の奴・・・。

それはそれで迷惑な話である。

大体、こんなのはホラーとしても全く怖くも無ければ面白くもない。

某イソラ様のように、首吊りしたままの状態でぶら下がっている幽霊の脇を通り過ぎたり、突然転がり出てきた生首に言い掛かり付けたり、眼球が腐って垂れ下がった人を吃驚させて遁走させたり、天井と箪笥の隙間から覗いている人に向かって「これ以上娘を脅したら只ぢゃおかんぞ！」と恫喝したり・・・。

ヘタレの自称・飼い主にも少しは、そんな武勇譚を見習って欲しいものである。

吾輩の不覚はアレか・・・。

生後90日のワクチンを終えたばかりで右も左も分からないような幼い頃に、飼い主（勿論、自称であるが）と云う名の吾輩が庇護してやるべき同居人の選択を誤った･･･或いは選択権がなかった事に尽きるのではないだろうか。

嗚呼。

何て可哀想なんだろう･･･吾輩って（爆）。